希望を持って、新年を迎える気持ちではいたが、いざ新年が明けても気持ちが晴れ晴れとしない。挨拶が遅れてしまったのは、その気後れから新年早々に愚痴も言いたくなかったからだ。世界中探しても今は嬉しい、楽しい話などなかなか見つけられないのに、見たくもない顔ばかりがテレビを賑わしているからだ。トランプ、習近平、プーチン、安倍、金正恩、文在寅・・・等々いづれも気持ちの晴れる顔ではない。いずれもその「不徳」がゆえに、自国ばかりかその周辺国にそして世界中に不幸を巻き散らしながら、したり顔をしている恥知らずな連中である。これでは今年も多くを期待することは出来ないと、滅入っていたのだ。
1月25日午前1時、早い朝食を取りながら見ていたテレビに引き付けられた。それはNHK・BS放送の「テイラー博士からのメッセージ」であった。女性脳学者として知られたジル・ボルティ・テイラー博士がある日突然脳卒中になってしまい、その優秀な頭脳の左半分が壊死してしまった。言葉はもちろん大切な機能の殆どを失ってしまったのだ。以後は通常廃人のようにただ生きるだけの人生の筈であるが、彼女は違っていた、自分でその残された右半分の脳を使って状況を分析し、まだ残っている半分の脳をフルに活用すれば、何とかなると判断して、必死に厳しいリハビリ訓練をして今では通常の生活ばかりか、以前の研究や講演までも続けるまでに復活した話であった。まだ五体満足な自分には大きな衝撃であった。まだまだ努力が足りないと頭を殴られた思いがして、まだ百年生きられる程の力を与えられた思いがした。
人間は生涯その頭脳の20~30%位しか使わず終わると聞いていたので、さもありなん、勿体ない話ではないかと思い、少なくとも半分は使って死にたいと、使わないうちは死ねないと思った。もっともジルの母親は、一日中数学の数式を考えているのが趣味である程の数学者であったと言うから、そもそも出来が違うのかもしれない、しかし使うか使わないかは出来とは関係ないだろうと思うほかないが。