あの民主党政治の行き詰まりと東日本大震災の影響と急激な円高の中で日本全体が喘いでいたときに、安倍内閣が「アベノミクス」なる今までの財政健全化政策をかなぐり捨て「あっと驚く経済政策」を打ち出し高らかに「デフレ脱却」を謳い上げたときは、その着眼の大胆さと新鮮さに驚き、日本銀行総裁まで挿げ替えて実行に至った手腕と実行力に、日本ばかりか世界中が喝采を上げたものだった。
確かに「一挙に円安が進み」「株価は暴騰し」大手の輸出企業から大幅な黒字が連発して、デフレマインドは一掃されたかに見え、真に華々しい飛ぶ鳥をも落とす勢いでのスタートであった。
その後大増益の大手企業は政府の「賃上げ要請」を受けて大幅な賃上げムードにはなったが、企業比率の大きな中小企業までは景気が及ばず、期待はずれで未だに不況感から脱出出来ずに、賃上げどころではないのが現状である。おまけに消費税のアップが景気の足を引き円安による物価上昇が追い討ちとなり、返って苦境に陥ってしまった所も多いと聞く。こんな状況の中で好景気ムード等出て来るはずも無いのだが確かに良い方向に動き出している事は事実だ。仕事も出てきているが下までは中々行き渡らないのが現状だ。何分にも最初の受益者が、為替差益であったり、IT分野であったり、投資家であったりして、自動車や一部の電機を除くと殆どが労働を伴わない分野であったから、一時の景気が頭上を掠め飛んでいってしまった。
一本目の矢、機動的財政政策の名の下に行われた成長分野や防災、復興関係の公共事業への投資、二本目の大幅な金融緩和政策は政府が主導出来たので、資金は至る所でルーズな位に潤沢になっているらしいが、実際の事業のほうは、物不足と人手不足に加えて物価高騰が障害になり投資額ほど進まない。かてて加えて第三の矢であると言われている「成長戦略」により民間投資を換気するということらしいが、これがまたIT関連であったりアニメ、ゲーム関連だったり娯楽施設やサービスであったりして、又又空中戦の帰来があって、長年に亘って物作り日本を支えて来た中小の物作り工場には、一顧だにせず時代遅れかの如く見捨てかねない傾向である。この調子では日本の過半数を占める中小零細に景気が行き渡るのはかなり先のことになり、再び賃金の上昇が見込めないままに、物価だけ上昇する最悪のシナリオに陥り、ばら撒いた分の多額の借金だけが残る事態も予想される。